― 不整脈治療の現場で、
患者さんの安全と未来を支える ―
― 不整脈治療の現場で、
患者さんの安全と未来を支える ―
OBOGiインタビュー_国際
臨床の中から研究課題を見つけ、学会発表から論文につなげている若手臨床工学技士、埼玉医科大学医用生体工学科(現、臨床工学科)の卒業生の一人である福岡 祐さんにインタビューを行いました。福岡さんは、心臓に関わる最前線の現場で、カテーテルアブレーション、ペースメーカー、人工心肺、機械的循環補助、そして、心臓移植関連業務に携わりながら、研究を進めています。
今回のインタビューでは、受賞につながった研究、日々の業務、学生時代の経験、そして、これから臨床工学技士を目指す高校生へのメッセージについて話をうかがいました。

福岡 佑 さんのご略歴

2019年3月 埼玉医科大学保健医療学部臨床工学科卒業
         臨床工学技士国家試験合格
2019年4月    埼玉医科大学国際医療センターMEサービス部  (現在に至る)
受賞歴
2024年~ 第16回 日本不整脈心電学会植込みデバイス関連冬季大会最優秀演題賞受賞
2026年~ 第18回 日本不整脈心電学会植込みデバイス関連冬季大会最優秀演題賞受賞

「たまたま」から始まった医療の道

正直に言うと、僕は最初から臨床工学技士になりたくて医用生体工学科(現、臨床工学科)に進んだわけではありませんでした。本当は別の学科を受けるつもりだったのに、入学試験の出願でマークミスをしてしまって、この道に進むことになったんです。最初は戸惑いもありましたが、結果的にはそれが大きな転機になりました。

ゼロからのスタートでも大丈夫だった理由

入学当初、医療の知識はほとんどありませんでした。でも逆にそれがよかったのかもしれません。すべてが新鮮で、「知ること」が面白かったんです。特に印象に残っているのは、先生方が実際の現場の話をたくさんしてくれたことです。「臨床工学技士ってこんな仕事なんだ!」と具体的にイメージできたことで、自分の中で少しずつこの仕事への興味が深まっていきました。

現場に出て感じた「やりがい」

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現在は主に心臓に関わる仕事をしています。ペースメーカーやカテーテルアブレーションなど、不整脈の治療が中心です。1日に2〜3件の手術に関わることもあり、忙しい日々ですが、その中で強く感じるのは「人が元気になっていく過程に関われる」ということです。特に印象的なのは、補助人工心臓を装着し心臓移植を待つ患者さんとの関わりです。長い時間を一緒に過ごし、装置の説明や生活のサポートをしながら信頼関係を築いていきます。そして、何年も待って心臓移植が成功されて、定期的に検査に来られるときにお会いする機会もあるのですが、元気な姿を拝見したり、小児の方が成長する過程を見ると、あんなちっちゃかったのにと思うときがあります。そのときは、本当にこの仕事をやっていてよかった、埼玉医科大学国際医療センターで働くことができてよかったと感じます。

※埼玉医科大学国際医療センターは、国内の心臓移植実施12施設のうち、11歳未満の小児を含む全年齢の移植手術が可能な6施設のうちの1施設です(2026年4月1日現在)。
https://www.jotnw.or.jp/facility/list4.php

研究を始めたきっかけ

研究を始めたのは、入職して4年目くらいのときでした。きっかけはシンプルで、「患者さんに使うデバイス(機器)なのに、自分がよく分かっていないのは嫌だな」と思ったことです。例えば、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)に臨床工学技士として業務に関わる中で、あるいはTAVIの合併症(術後の不整脈など)についての報告や論文を研鑽する中で、臨床工学技士として合併症の減少につながることができないかと考えるようになりました。そこから自分で調べたり、医師に教えてもらったりしながら、データを集めて検証するようになりました。誰かに言われたわけではなく、職場の上司とも相談し自分でやり始めたのが最初でした。

研究で一番大変だったこと

研究で一番大変だったのは、とにかく地道な作業でした。何百例もの患者データを一つひとつ確認し、評価していく作業は本当に大変でした。最初に出した論文も査読者からは「データ数が少ない」と言われて、さらに倍近くまで増やしました。仕事をしながら夜に作業することも多く、正直、きつかったですが、それでもやり切れたのは「自分で疑問をもって始めたこと」だったからだと思います。こうして積み重ねてきた研究は、日本不整脈心電学会でも高く評価され、植込みデバイス関連冬季大会のメディカルプロフェッショナル最優秀演題賞を2度受賞することにつながりました。これらの研究は、1つは英語論文※として掲載され、さらにもう1本も執筆中です。自分で疑問を持ち、調べ続けてきたことが形になったと感じた瞬間でした。

※掲載された論文https://doi.org/10.1111/pace.70138Digital Object Identifier (DOI)


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2度の受賞後の写真(臨床工学科の実習室にて)

臨床でつらかった時期もあった

もちろん、順調なことばかりではありませんでした。特に3〜4年目の頃は、夜間の呼び出し(コール)が多くて、ほぼ毎日夜中に起こされる生活でした。呼ばれない日でも、同じ時間に目が覚めてしまうくらいで、少し睡眠のバランスを崩してしまった時期もありました。今振り返ると、あの時期が一番きつかったと思います。

高校生へのメッセージ

もし、臨床工学技士を目指すか迷っているなら、「最初から完璧じゃなくていい」と伝えたいです。僕もゼロからのスタートでしたから。臨床工学技士の仕事は、機械を扱うだけではなく、人と人をつなぐ仕事です。患者さんやそのご家族、医師、看護師など、いろいろな人の間に立って支える役割があります。だからこそ、「人と関わるのが好きな人」や「誰かを支えるのが好きな人」には、とても向いている仕事だと思います。

最後に

僕自身、「たまたま」この道に入りましたが、今はこの仕事を選んでよかったと思っています。もし少しでも興味があるなら、ぜひ一歩踏み出してみてください。その先に、自分なりのやりがいや発見がきっと見つかると思います。