血液内科

主な症状

正常な血液細胞が減少することによって以下のような症状が起こります。

• 赤血球が減ることによる息切れや動悸、ふらつき
• 白血球が減ることによる感染症（発熱や咳など）
• 血小板が減ることによるあざや鼻血、歯茎からの出血

このほか、病型によってはリンパ節や歯肉のはれ、発疹などを自覚することもあります。

解説

血液の中には、赤血球（体中に酸素を運搬する細胞）、白血球（病原体からからだを防御する細胞）、血小板（かさぶたを作って出血を止める細胞）という3種類の細胞があり、これらは全て骨の中の骨髄というスペースで、造血幹細胞と呼ばれる「血液細胞の種」から造られます。造血幹細胞が様々な細胞に成長していくことを「分化」といいますが、急性白血病は分化の早い段階にある細胞が「がん化」し、分化を止めてしまうことで起こります。分化を止めた白血病細胞（芽球とも呼びます）が骨髄の中で増殖し、骨髄を占拠してしまうため、正常な血液細胞が造られなくなります。

急性白血病の診断は、血液検査や骨髄検査で白血病細胞の増殖を確認することでなされます。病気の性格を詳細に評価するため、顕微鏡での細胞の観察だけでなく、遺伝子解析や染色体分析などのさまざまな検査を行います。白血病細胞の性質によって急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病に分類されます。

治療方法

急性白血病は進行が早く、適切な治療が行われないと数日〜数週のうちに致命的な経過を取ることが少なくありません。このため、診断が確定すれば早急な治療が必要となります。治療の主体は抗がん剤による化学療法です。無菌室への入室を要する強力な化学療法を複数回繰り返すことで、白血病細胞の根絶を目指します。遺伝子解析や染色体分析などの結果から、化学療法のみでは十分に治癒の可能性を期待できないと判断される場合には、同種造血幹細胞移植（骨髄移植や臍帯血移植など）が必要となる場合もあります。当科では同種造血幹細胞移植は行っていないため、移植治療が必要な場合には連携施設に依頼しています。

主な症状

正常な血液細胞が減少することによって以下のような症状が起こります。

• 赤血球が減ることによる息切れや動悸、ふらつき
• 白血球が減ることによる感染症（発熱や咳など）
• 血小板が減ることによるあざや鼻血、歯茎からの出血

解説

血液の中には、赤血球（体中に酸素を運搬する細胞）、白血球（病原体からからだを防御する細胞）、血小板（かさぶたを作って出血を止める細胞）という3種類の細胞があり、これらは全て骨の中の骨髄というスペースで、造血幹細胞と呼ばれる「血液細胞の種」から造られます。

骨髄異形成症候群はこの造血幹細胞が異常を来し、正常な血液細胞を造れなくなってしまう病気です。骨髄異形成症候群では、形や機能に異常を持つ血液細胞が大量に造られますが、これらは血液中に出てくる前に破壊されてしまいます。結果として末梢血液中の血液細胞の数は減少し、上に挙げたようなさまざまな症状を引き起こします。また、造血幹細胞の異常の程度がひどくなると、骨髄異形成症候群から悪性度の高い急性白血病に移行することもあります。

骨髄異形成症候群の診断は、血液細胞の減少に加えて、骨髄検査で血球の形の異常や染色体異常を確認することでなされます。

治療方法

骨髄異形成症候群は、造血幹細胞の異常の程度によって病状に大きな幅がある疾患です。高齢者に多く、治療によって治癒させることは難しいため、異常の程度が軽い場合には輸血や造血因子の注射など、負担の少ない支持療法を中心に行って経過をみます。異常の程度が重く、白血病への移行が懸念される場合には、アザシチジンという抗がん剤による化学療法を行います。
若年者では治癒を狙って同種造血幹細胞移植を行うことがあります。当科では同種造血幹細胞移植は行っていないため、移植治療が必要な場合には連携施設に依頼しています。

主な症状

リンパ節のはれ（首、腋の下、足の付け根など）が初発症状として最多です。発熱や寝汗、体重減少がみられる場合もあります。

解説

血液中には、病原体や異物から体を守っている白血球という細胞があります。このうちの一種であるリンパ球が「がん化」し、異常に増殖する病気が悪性リンパ腫です。悪性リンパ腫には多くの病型があり、症状や治療法はそれぞれ異なりますが、大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられます。非ホジキンリンパ種は、さらに数十種類に細分化されますが、進行の速さによって大まかに低悪性度（年単位で進行）、中悪性度（月単位で進行）、高悪性度（日〜週単位で進行）の3つに大別されます（悪性度はあくまでも進行の早さによって決められたもので、治療反応性や治りやすさの指標ではありません）。悪性リンパ腫が発症する原因として、ウイルスや細菌、自己免疫疾患、免疫不全を引き起こす薬剤などが関与している場合がありますが、原因が明らかではない場合も少なくありません。

悪性リンパ腫の診断は、腫れているリンパ節を外科的に取り出し（生検）、その組織を顕微鏡で観察することでつけます（病理診断）。頚部などの表在リンパ節の生検であれば局所麻酔を使って外来で対応できることが多いです。深部にしか病変がない場合には、CTなどで体の内部を確認しながら針を刺して組織をとる場合もあります。診断が確定したら、CT検査やPET検査、骨髄検査などを行って病気の広がり（病期）を確認します。病期は治療方針を決める上で必要不可欠な情報です。

治療方法

悪性リンパ腫の治療は悪性リンパ腫のタイプ、病期によって異なります。抗がん剤を用いた化学療法が治療の主体となり、病期によっては放射線照射を併用する場合もあります。化学療法はリツキシマブやポラツズマブ・ベドチンといった、リンパ腫細胞のみを選択的に攻撃する分子標的薬を含む、複数の抗がん剤を併用して行います。初回のみ入院で行い、2回目以降は通院で受けられる方法や1ヶ月弱程度の入院と一時退院を繰り返しながら行う方法があり、病状によって最も適切なものを選択します。

再発時には、造血幹細胞移植やキメラ抗原受容体T細胞（CART）療法といった治療が必要になる場合があります。これらの治療は当科では行っていないため、連携施設に依頼しています。当科では、悪性リンパ腫に対する新薬の治験を積極的に行っています。

主な症状

初期には自覚症状はなく、健康診断などの血液検査の異常で見つかることも少なくありません。進行してくると、骨髄腫細胞が骨をもろくしてしまうため、骨の痛みや病的骨折などを起こします。このほかに貧血（息切れや動悸）、腎機能障害（むくみなど）、高カルシウム血症（頭痛や吐き気）などがみられます。

解説

骨の中の骨髄という場所にはリンパ球から分化した形質細胞という細胞がおり、免疫グロブリンと呼ばれる蛋白を作っています。この蛋白は抗体と呼ばれ、ウイルスなどの異物を攻撃して体を守る働きがあります。健康な体では多種多様な異物に対応できるよう、たくさんの種類の免疫グロブリンが作られています。多発性骨髄腫は「がん化」した形質細胞が骨髄で増殖し、1種類の免疫グロブリンを産生するようになる病気で、血液がんの一種です。がん化した形質細胞（骨髄腫細胞）が産生する免疫グロブリンをM蛋白と呼びます。年齢の重ねた方に多く、多くの場合60歳以上で発症します。

多発性骨髄腫の診断のためには、血液検査、尿検査、骨髄検査、画像検査（全身の骨のレントゲンやCT、MRI、PETなど）が必要です。M蛋白と骨髄腫細胞の増加、これらによって引き起こされる臓器障害の有無を確認します。M蛋白の増加のみで臓器障害のない、「前がん状態」で見つかり、経過観察中に骨髄腫に進展する場合もあります。

治療方法

多発性骨髄腫は治癒させることが難しい疾患です。早期の治療によって必ずしもその後の経過が改善しないため、症状や臓器障害がない場合（無症候性）には慎重に経過観察し、症候性となった時点で治療を開始します。抗がん剤を用いた化学療法が主体となりますが、放射線照射を併用することもあります。若年の患者さんでは、連携施設に依頼して造血幹細胞移植という、さらに強力な治療を行うこともあります。近年では効果の高い新薬が続々と開発され、予後は大きく改善しています。当科では抗CD38抗体製剤やプロテアソーム阻害薬、免疫調整薬といった新規薬剤を用いた治療、多発性骨髄腫に対するに対する新薬の治験を積極的に行っています。

主な症状

正常な血液細胞が減少することによって以下のような症状が起こります。

• 赤血球が減ることによる息切れや動悸、ふらつき
• 白血球が減ることによる感染症（発熱や咳など）
• 血小板が減ることによるあざや鼻血、歯茎からの出血

解説

血液の中には、赤血球（体中に酸素を運搬する細胞）、白血球（病原体からからだを防御する細胞）、血小板（かさぶたを作って出血を止める細胞）という3種類の細胞があり、これらは全て骨の中の骨髄というスペースで、造血幹細胞と呼ばれる「血液細胞の種」から造られます。再生不良性貧血はこの造血幹細胞が減少し、血液細胞を造れなくなってしまう病気です。結果として末梢血液中の血液細胞の数は減少し、上に挙げたようなさまざまな症状を引き起こします。出血や感染症を合併し、致命的な経過を取ることもあります。
再生不良性貧血の診断は、血液細胞と骨髄検査で細胞の減少を確認することでなされます。細胞が減少した骨髄が脂肪に置き換わっていることを確認するためにMRI検査を補助的に用いることもあります。

治療方法

軽症の場合には必要に応じて輸血を行いながら経過観察します。重症度が高い場合には免疫抑制療法と同種造血幹細胞移植が選択肢となります。同種造血幹細胞移植は若年の患者さんで、白血球の型が一致するドナー候補（兄弟や姉妹）がいる場合には積極的に考慮します。
当科では同種造血幹細胞移植は行っていないため、移植治療が必要な場合には連携施設に依頼しています。

主な症状

血小板が減ると、皮膚にあざが目立つようになります。重篤な場合には鼻血や歯茎からの出血が起こり、止血が困難になることもあります。女性では月経量が増えることも多いです。

解説

血液中には、かさぶたを形成して出血を止める血小板という細胞が存在します。特発性血小板減少性紫斑病（ITP）は、免疫の異常により血小板が減少することで、出血しやすくなる病気です。免疫は細菌やウイルスなどの異物を攻撃して体を守るためのシステムですが、これが自身の血小板を攻撃することで血小板が破壊され、その数が減少してしまいます。急性型と慢性型の2つの病型があり、急性型では風邪などをきっかけに発症することが多い一方で、慢性型では誘因がはっきりしないことが少なくありません。厚生労働省から難病に指定されているため、所定の手続きを経て認定が下りると、医療費の補助を受けることができます。

診断は血小板が減る他の病気（白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、膠原病、薬剤の副作用など）を否定することで行われます。血液検査や骨髄検査が行われることが多いです。

治療方法

小児に多い急性型は、半年以内に約9割が自然軽快するため、出血傾向が強くなければ経過観察します。成人に多い慢性型のうち、ピロリ菌感染がみられる患者さんに対しては、除菌治療をすることで約半数で血小板が増加します。ピロリ菌に感染していない、除菌しても血小板が増えない場合には、ステロイド治療を行います。血小板が急激に減少し、全身の出血傾向が強い場合は、入院してガンマグロブリン大量療法と血小板輸血を行う場合もあります。

ステロイド治療に不応の場合には、抗体医薬であるリツキシマブやトロンボポエチン受容体作動薬、脾臓摘出などの選択肢があります。当科では、難治性の特発性血小板減少性紫斑病に帯する新薬の治験を積極的に行っています。

主な症状

血小板が減ることで、皮膚にあざができたり、鼻血が出やすくなったりします。体内で赤血球が破壊されることにより、黄疸や貧血による息切れ、動悸がみられます。発熱や意識障害、麻痺などの症状を伴うこともあります。

解説

止血に関与する血小板は、血管が傷ついて出血が起こったときに活性化して、かさぶたを作る働きがあります。血栓性血小板減少性紫斑病は、出血が起こっていないのに体内で血小板が活性化し、血栓を作る病気です。血管内に血栓がたくさんできることで、腎臓の細かい血管に詰まって腎機能が障害されたり、赤血球が血栓に衝突して破壊されることで、黄疸や貧血がおこったりします。診断や治療が遅れると致死率が高い、恐ろしい疾患です。

診断は血液検査で血小板の異常な活性化を制御する「ADAMTS13」という酵素の活性が低下していることを確認することでなされますが、結果判明までに数日を要します。それを待っていては治療開始が遅れてしまうため、血液検査で血小板の減少と血栓に衝突して砕けた赤血球の破片（破砕赤血球）を認めたら、本疾患を疑って治療を開始します。

治療方法

血小板の活性化を制御する酵素の活性を回復させるため、血漿交換療法とステロイド治療を行います。治療に対する反応が不良の場合には抗体医薬であるリツキシマブやカプラシズマブを投与します。当科では、血栓性血小板減少性紫斑病や、類似した疾患である非典型溶血性尿毒症症候群（aHUS）に対する新薬の治験を積極的に行っています。

主な症状

血友病は出血が止まりにくい病気です。鼻血、あざ、関節内出血による痛みと腫れが主な症状です。先天性の血友病は主に関節内出血が多く、適切な治療を受けずに関節内出血を繰り返すと、関節が変形する血友病関節症を合併します。
先天性の血友病は赤ちゃん（男児）のあざが多い、関節内出血の痛みでハイハイが遅い、智歯（親知らず）抜歯後に出血が止まらないことをきっかけに病気が見つかることがあります。
後天性血友病Aは急に発症する病気で、主に皮膚のあざ、筋肉内の出血による痛みを特徴とし、輸血を必要とする貧血を伴うこともあります。

解説

血友病には遺伝子の異常で発症する先天性と、免疫の異常による後天性があります。先天性には血液凝固第8因子の減少による血友病Aと、第9因子の減少による血友病Bがあります。国内の患者数は血友病Aが約5,600名、血友病Bが約1,200名です。伴性劣性遺伝形式のため、患者のほとんどが男性です。

血友病患者の多くは保因者である母親から生まれてきますが、遺伝子の変異は突然起こることもあります。保因者の女性には血友病の原因となる遺伝子変異がありますが、男性患者と比べて症状が軽く、月経過多が主な症状です。保因者は国内に1～3万人いると推定されますが、詳しいことはわかっていません。

血友病の検査では、血が止まりにくいかどうかを調べるために、活性化部分トロンボプラスチン時間（APTT)が正常よりも延長している場合、血液凝固因子の活性を調べます。健康な方を100％とし、40％未満であれば血友病と診断します。なお、凝固因子活性により重症度が、重症（1％未満）、中等症（1％～5％未満）、軽症（5％以上～40％未満）に分類されます。

後天性血友病Aは第8因子活性が低下し、第8因子インヒビターが陽性であれば診断できます。後天性血友病Aの約半数には、膠原病、がんの合併があり精密検査が必要です。

治療方法

先天性血友病の重症型と中等症の患者には、血液凝固因子製剤の定期補充療法を行い、関節内出血を予防します。これにより通勤と通学の制限がなくなり、旅行とスポーツも楽しめるようになります。最近、血友病Aには定期的な皮下注射が可能な抗体医薬が処方できるようになりました。

軽症の患者には、出血時に補充療法を行います。なお、関節内出血が起きた時は、安静を保ち、患部を冷やして圧迫する、足の出血の場合は台の上に足を乗せ心臓より高い位置に保ちます。

定期補充療法を受けていない軽症・中等症の患者の鼻血、抜歯後の出血が止まらない場合、血液凝固因子の補充療法を行います。なお、抜歯、手術前に計画的に補充療法を専門医の指導のもと行います。先天性血友病の場合、補充療法を家庭で行うことも可能です。先天性血友病治療の経済的負担を軽減するための医療費助成制度（特定疾病療養など）があり、自己負担額が実質無料になります。

後天性血友病Aの出血症状は重く、緊急入院してバイパス止血療法を行うことがほとんどです。止血に必要な製剤を投与し、免疫抑制療法として副腎皮質ステロイドを併用します。なお、当院では先天性血友病に対する遺伝子治療を含む新薬の治験を積極的に進めています。