埼玉医科大学雑誌 第38巻
埼玉医科大学雑誌 第38巻

埼玉医科大学雑誌 第38巻 第1号(2011年8月発行)

学内グラント 終了時報告書

P1-5 視床下部インスリン/レプチン抵抗性の分子機構と摂食・糖代謝調節 研究代表者:小野 啓
研究分担者:住田 崇,鈴木 徳子
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P6-8 がん幹細胞において野生型p53の活動を制限するnucleosteminの役割 研究代表者:加藤 英政
研究分担者:片野 幸,佐川 森彦
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P9-10 全ゲノムSNP解析を用いた日本人由来サルコイドーシス関連遺伝子の同定 研究代表者:田中 知明 PDF
P11-13 プロレニン受容体の新たな機能 研究代表者: 千本松 孝明 PDF
P14-17 新生犬心室機能特性とCa Sensitizerの有効性に関する研究 研究代表者:先崎 秀明
研究分担者:増谷 聡,関 満,
石戸 博隆
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P18-20 2型糖尿病における脳内酸化ストレスの動態とその制御による認知機能障害への効果 研究代表者:菅 理江
研究分担者:島津 智一,井上 郁夫
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P21-23 アレルギー疾患患者における上・下気道連関の研究 研究代表者:永田 真
研究分担者:加瀬 康弘,善浪 弘善,
中込 一之,中村 晃一郎,森 圭介,
松下 祥
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P24-28 交流磁界が細胞内Caイオン濃度の調整機能に及ぼす影響の解析 研究代表者:駒崎 伸二
研究分担者:猪股 玲子
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P29-34 細胞分化に伴う上皮Naチャネルの発現と組織内局在を規定する因子の同定 研究代表者:高田 真理
研究分担者:金子 優子,
青葉(藤牧) 香代,穂苅 茂
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P35-38 地域の社会福祉施設での早期体験実習は医学生の意識をどう変えるか 研究代表者:佐藤 真喜子
研究分担者:荒木 隆一郎,柴崎 智美,
鈴木 洋通,森 茂久,有田 和恵,
鈴木 郁子,丸木 和子
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P39-44 BOLD MRIを用いた腎機能評価法の確立 研究代表者:井上 勉
研究分担者:小澤 栄人,岡田 浩一,
竹中 恒夫,鈴木 洋通
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一括 学内グラント終了時報告書PDF PDF

学内グラント 終了後報告書

P45 ペプチド結合リポソームを用いた,エボラウイルスに対するCTL誘導型ワクチンの開発 研究代表者:松井 政則
研究分担者:禾 泰壽,山岸 敏之,
赤塚 俊隆,内田 哲也
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P46-47 眼内血管新生病の遺伝子解析と抗血管新生治療に対する個別化医療の確立 研究代表者:森 圭介
研究分担者:粟田 卓也,樺澤 昌,
田北 博保,大崎 昌孝,米谷 新
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P48-49 筋組織内でおこる異所性骨化メカニズムの解明とその治療法・予防法の開発 研究代表者:福田 亨
研究分担者:片桐 岳信,穐田 真澄,
織田 弘美,加藤 仁
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P50 肺癌における予後マーカーとしてのEZH2発現とゲノム解析による予後・転移規定因子同定 研究代表者:小山 信之 PDF
P51 慢性腎臓病患者の予後改善に関する基礎及び臨床的研究 研究代表者:竹中 恒夫
研究分担者:井上 勉,加藤 信孝,
高根 裕史,宮崎 孝
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P52 がん治療法確立へむけたがん幹細胞と胚性幹細胞に共通する腫瘍性維持の分子機構解明 研究代表者:西本 正純
研究分担者:山岸 敏之
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P53-55 メタボリックシンドローム診断のための腹囲測定法の標準化─光3D計測装置の開発─ 研究代表者:秦 朝子
研究分担者:林 静子,吉澤 徹,
若山 俊隆,奥村 高広,冨田 幸江,
天野 雅美,辻 美隆
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P56 神経芽腫マウスモデルを用いた自然免疫細胞による腫瘍死細胞除去と免疫応答の検討 研究代表者:井上 成一朗 PDF
P57 ホジキンリンパ腫における転写因子NF-κB分子の細胞質─核内振動の役割 研究代表者:豊住 康夫
研究分担者:田丸 淳一,東 守洋,
木崎 昌弘
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P58 Cold shock proteinファミリーdbpAの悪性リンパ腫の病態発生における役割 研究代表者:東 守洋
研究分担者:田丸 淳一,得平 道英,
川野 竜太郎
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P59 リンパ球運命決定におけるアダプタータンパクSITの役割の解析 研究代表者:塚越 由香
研究分担者:加門 正義
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一括 学内グラント終了後報告書PDF PDF

特別講演

P60 マルファン症候群の近年のトピックと歯科的問題点 須田 直人 PDF
P61-62 臨床試験にかかる政策の国際動向 川上 浩司 PDF
P63 医療機器・器具の薬事承認を取得するためのノウハウについて 川端 隆司 PDF
P64-65 細胞膜下細胞骨格の機能とその傷害による筋ジストロフィー 小澤 鍈二郎 PDF

TOPICS

P66 大学病院の被災地医療活動 片山 茂裕 PDF
P67 東日本大震災における派遣チームの活動について 萩原 弘一 PDF
P68-69 慢性期における医療支援に参加して 皆川 晃伸 PDF
P70-71 気仙沼での医療支援活動報告 野口 雄一 PDF
P72-74 東日本大震災における災害派遣医療活動報告 大谷 義孝,根本 学 PDF

研究室紹介

P75-76 医学部 形成外科 市岡 滋 PDF
P77-78 総合医療センター 血液内科 木崎 昌弘 PDF
P79-80 医学部 微生物学 赤塚 俊隆 PDF
P81-82 ゲノム医学研究センター 遺伝子治療部門 三谷 幸之介 PDF

Thesis(別頁)

T1-T7 フルルビプロフェンが全静脈麻酔下でフェンタニルCp50incision(執刀時)に与える影響とフェンタニルTarget Controlled Infusion (STANPUMPTM) の評価 近藤 美喜子 PDF
Thesis
フルルビプロフェンが全静脈麻酔下でフェンタニルCp50incision(執刀時)に 与える影響とフェンタニルTarget Controlled Infusion(STANPUMPTM)の評価

近藤 美喜子
臨床医学研究系 麻酔学

医学博士 甲第1080号 平成20年3月28日 (埼玉医科大学)

目的:麻薬性鎮痛薬フェンタニルと静注用NSAIDフルルビプロフェンアクセチル(以下FP)の相互作用を見るために,Target Controlled Infusion(以下TCI)を利用して皮膚切開時50%の体動を抑制するフェンタニル濃度(以下Cp50incision)がFPによって,どのくらい低下するかを検討する事と,予測及び実測フェンタニル血中濃度からフェンタニルTCIソフトウエアSTANPUMPTMの精度を評価する事である.
対象と方法:文書による承諾を得た婦人科腹腔鏡手術予定患者54名を対照群(C群)とFP投与群(F群)の2群に分けた.全身麻酔導入気管挿管後,C群は生食をF群はFP1 mg/kgを静注した.麻酔の維持はプロポフォール,フェンタニルによる全静脈麻酔とした.プロポフォールTCI濃度は予測血中脳内濃度5μg/mlで平衡維持した.フェンタニルTCI濃度は両群とも第一例目を3ng/mlで開始し以降は体動の有無により次患者の濃度を0.5ng/ml上下させるup-down法にて両群のCp50incisionを求めた.STANPUMPの精度は合計103サンプルの実測フェンタニル濃度と予測フェンタニル脳内(血中)濃度を比較して検討した(回帰直線,予測値と実測値の平均値の差の検定,TCI精度指標のMDPE,MDAPEで評価).
結果:Cp50incisionは予測血中濃度がC群で1.83±0.58 ng/ml(Mean±SD以下同),F群では0.75±0.45 ng/ml(p=0.0048),実測血中濃度は C群で1.51±0.97 ng/ml,F群で0.51±0.14 ng/ml(p=0.039)でどちらもF群が低かった.
 予測値を横軸・実測値を縦軸とした回帰直線相関係数は0.62を示した.全測定値の予測値と実測値の平均値の違いは,それぞれ1.48±0.75 ng/ml,1.19±0.99 ng/ml(p=0.016)と実測値が低かった.TCIの実測値と予測値の乖離を示す指標であるMDPE; -40.0%,MDAPE; 46.7%とかなり精度が悪かった.
考察と結論:1 mg/kgのFP執刀前投与はフェンタニルCp50incisionを約30%に低下させた.STANPUMPTMの予測値の精度は悪かった.

T9-T16 血液濾紙検査を用いた心肥大のない非弁膜症性心房細動例におけるファブリー病の診断 杉 佳紀 PDF
Thesis
血液濾紙検査を用いた心肥大のない非弁膜症性心房細動例におけるファブリー病の診断


杉 佳紀
臨床医学研究系 内科学 循環器内科学

医学博士 甲第1164号 平成23年3月25日 (埼玉医科大学)

緒言:ファブリー病は,X染色体劣性遺伝の疾患でライソゾーム加水分解酵素であるα-galactosidase Aの活性低下に基づく先天性糖脂質代謝異常症である.ファブリー病の心血管徴候は,心肥大,不整脈,弁膜症,虚血性心疾患など多彩であり,原疾患として診断されることが遅れがちとなる.本邦においても,原因不明の左室肥大もしくは肥大型心筋と診断されている症例におけるファブリー病の有病率,予後等に関して多くの研究が積み重ねられてきたが,不整脈の観点からの報告は少ない.今回は今まで数多く報告されている心肥大患者と心肥大のない非弁膜症性心房細動例におけるファブリー病の診断について比較した.
方法:心電図もしくは24時間心電図において心房細動と診断された71例,心臓超音波で心肥大と診断した患者44例に対して,血液濾紙検査によりα-galactosidase A酵素活性を測定した.心房細動は,非弁膜症性のものならば,発作性,持続性,慢性の全てを対象とした.α-galactosidase A酵素活性を2回測定し,平均が低値(男性17 Agal/U以下,女性 20 Agal/U以下)の例に対して遺伝子検査を施行した.
結果:心房細動16例(22.5%),心肥大8例(18.1%)でα-galactosidase A酵素活性低値と診断した.そのうち,心房細動の2例(2.8%),心肥大の1例(2.3%)においてE66Qの遺伝子変異を認めた.
考察:血液濾紙検査により,心肥大のない非弁膜症性心房細動例中にファブリー病と診断できる症例が存在した.心肥大のない非弁膜症性心房細動は,心ファブリー病の早期の心血管徴候の一つである可能性が示唆される.

T17-T25 アペリン-12の胃酸分泌とヒスタミン分泌増加作用に関する研究―ラット胃内腔及び血管灌流単離胃を用いた検討― 大野 志乃 PDF
Thesis
アペリン-12の胃酸分泌とヒスタミン分泌増加作用に関する研究 ―ラット胃内腔及び血管灌流単離胃を用いた検討―


大野 志乃
臨床医学研究系 内科学 消化器・肝臓内科

医学博士 甲第1166号 平成23年3月25日 (埼玉医科大学)

背景:アペリンはウシの胃から抽出,分離されたペプチドであり,オーファン受容体APJに対する内因子リガンドとして発見された.アペリンとAPJレセプターは全身に広く分布している.アペリンは心血管系など多数の臓器の調節因子として重要な役割を担っていると推測されるが,アペリンの作用は十分に解明されていない.この研究は胃酸分泌におけるアペリンの作用を明らかにし,その作用のメカニズムの一部を解明した.
方法:胃内腔灌流ラットを作成し,蠕動ポンプを使用し胃に生理食塩水を灌流させた.アペリン-12,-13または-36の胃酸分泌への作用を検討するためにラットへ静脈投与を行った.さらにヒスタミン及び迷走神経の関与を明らかにするためアペリン投与15分前に前投薬としてファモチジン(0.33 mg/kg),5分前に硫酸アトロピン(0.1 mg/kg)静脈投与が施行された.またヒスタミン分泌に対するアペリンの作用を検討するために単離血管灌流ラット胃を作成した.灌流液中のヒスタミンはラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した.単離胃の胃粘膜中のヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)mRNA はreal time RT-PCRにより測定した.
結果:アぺリン-12(20-100 μg/kg)は用量依存性に胃酸分泌を増加させた.1)アペリン-12(100 μg/kg)は胃酸分泌を203%まで増加させた.2)アペリン-13と-36では酸分泌の増加は認められなかった.3)ファモチジンはアペリンの酸分泌刺激作用を完全に抑制した.4)アペリン-12(100 μg/20 ml/10 min)は単離血管灌流ラット胃で278%のヒスタミン分泌増加を認めた.またアペリン-12は単離血管灌流ラット胃においてHDCmRNAをコントロールと比較して480%まで増加させた.硫酸アトロピンは胃酸分泌においてアペリンの作用を抑制しなかった.アペリン-12はガストリン投与による酸分泌刺激の増加を増幅した.
結論:この結果はアペリン-12が胃酸分泌刺激を増加させその機序にヒスタミン分泌と合成の増加を介していることを示しており,アペリンが胃酸分泌に関与していること,あるいは胃酸分泌の調節因子のひとつであることを示唆しているものと思われる.

T27-T36 神経症状を伴う骨粗鬆症性椎体偽関節に対する経皮的椎体形成術の治療効果 齊藤 文則 PDF
Thesis
神経症状を伴う骨粗鬆症性椎体偽関節に対する経皮的椎体形成術の治療効果


齊藤 文則
大学病院 整形外科・脊椎外科学

医学博士 乙第1169号 平成23年5月27日 (埼玉医科大学)

背景:経皮的椎体形成術は,主に有痛性骨粗鬆症性椎体骨折に対して行われる医療用骨セメントを用いた最小侵襲手技のひとつである.しかし,いまだ本邦では保険適応となっておらず,施行出来る施設は限られている.一方,骨粗鬆症性椎体偽関節は,脊椎圧迫骨折後に続発し,進行すると疼痛のみならず遅発性運動麻痺も合併する重篤な疾患である.これまで遅発性運動麻痺を合併した骨粗鬆症性椎体偽関節に対する経皮的椎体形成術の報告はない.
対象および方法:症例は,2001年から2008年までの当院で椎体偽関節と診断され遅発性運動麻痺を合併した12椎体12症例を検討した.平均年齢は72.1±5.0歳,罹患椎体高位は,全例が胸腰椎移行部にあり,運動麻痺発生から手術までの期間は平均9.4±5.4週であった.椎体形成術の手技は,骨髄生検針を用いてpolymethylmethacrylateをcleft内に経皮経椎弓根的に注入した.術前および術後の背部痛は,Denis pain scale(P 1-5)を用いて評価し,活動能力は,Eastern Cooperative Oncology Group scale(PS 0-4)を用いて評価した.筋力は,Modified Medical Research Council’s manual muscle testing grade(MMT 0-5)を用いて評価した.臨床経過と画像所見(椎体動揺角と局所後弯角)は,術前,術直後,術1ヵ月後,術3ヵ月後,術6ヵ月後,術1年後と最終診察時に,それぞれ記録した.
結果:術直後より,全ての患者の疼痛はほぼ消失し,活動能力も改善した.その後も症状の改善は維持されていた.筋力については,術前すべての患者のMMTは0から3であったが,ほとんどの患者の術後MMTは4から5へと徐々に改善した.画像所見としては,術直後より罹患椎体の動揺性は安定化した.術後局所後弯角は,一時全例改善したが,12例中7例に隣接椎骨折が生じ矯正損失を認めた.これにより術後後弯角は増悪したが,筋力改善は全例で維持されたままであった.術後6ヵ月以内で,全ての症例の椎体間に長期間の安定化を示唆する架橋形成が観察された.
結論:遅発性運動麻痺を伴う骨粗鬆症性椎体偽関節に対する椎体形成術は,後弯変形を残すものの,疼痛や活動能力の向上,運動麻痺に対して有効である.


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埼玉医科大学雑誌 第38巻 第2号(2012年3月発行)

特別寄稿

P83-91 「すぐれた臨床医」育成の現状と課題 山内 俊雄 PDF

特別講演

P92-93 RNA階層における炎症と組織恒常性の調節機構 浅原 弘嗣 PDF
P94 病原因子排出装置を介した細菌の感染戦略 阿部 章夫 PDF

医学研究センター

P95 医学研究センター 松下 祥 PDF
P96 研究主任部門 池淵 研二 PDF
P97-98 共同利用施設運営部門 坂本 安 PDF
P99-100 安全管理部門 赤塚 俊隆 PDF
P101-102 研究支援管理部門 松下 祥 PDF
P103-104 フェローシップ部門 丸山 敬 PDF
P105 研究評価部門 椎橋 実智男 PDF
一括  医学研究センターPDF   PDF

TOPICS

P106-108 CTの進歩とCT被曝 木村 文子 PDF

研究室紹介

P109-110 医学部 リウマチ膠原病科 三村 俊英 PDF
P111-112 総合医療センター 腎・高血圧内科 御手洗 哲也 PDF
P113-114 総合医療センター 血管外科 佐藤 紀 PDF
P115-117 国際医療センター 消化器外科研究室(再生外科部門) 小山 勇,宮澤 光男 PDF
P118-119 医学部 免疫学 松下 祥 PDF

Thesis(別頁)

T37-T43 喫煙歴を有する慢性線維化性間質性肺炎の臨床的特徴 加賀 亜希子 PDF
Thesis
喫煙歴を有する慢性線維化性間質性肺炎の臨床的特徴


加賀 亜希子
大学病院 呼吸器内科

医学博士 甲第1178号 平成23年7月22日 (埼玉医科大学)

[背景]
 近年,重喫煙者に認められる肺気腫合併肺線維症(combined pulmonary fibrosis and emphysema: CPFE)が注目され,その臨床像が検討されている.CPFEの一般的頻度や,詳細な画像的特徴など,明確にされるべき課題は多い.我々は本研究で,特発性の慢性線維化性間質性肺炎症例における喫煙の影響を評価する目的で,連続症例を用い,肺機能とX線画像を主体とした検討を行った.
[方法]
 2007年9月から2008年12月まで,埼玉医 科大学呼吸器内科を受診した原因不明の慢性線維化性間質性肺炎連続108例を対象とし,臨床情報を後ろ向きに検討した.
[結果]
 108例中,87例に喫煙歴を認めた.喫煙群では%VC,FEV1%は基準範囲内であったが,肺拡散能,特に%DLco/VAは喫煙群において有意に低下していた.高分解能CT所見では,喫煙群では非喫煙群に比して,蜂巣肺,小葉中心性肺気腫,傍隔壁型肺気腫や壁の厚い大型嚢胞(thick-walled large cyst: TWLC;直径2cm以上で壁厚が1から3mmの肺嚢胞)が有意に広範囲であった.このうち,小葉中心性肺気腫とTWLCは喫煙群にのみ認められた.TWLCの増大には,内部隔壁の破壊像を伴っていることが多かった.全肺容積に占めるTWLCの比率は小葉中心性肺気腫,傍隔壁型肺気腫,蜂巣肺のそれと正相関し,%DLco,%DLco/VAとは逆相関した.
 喫煙群をTWLCの有無で2群に分けたサブグループ解析では,TWLC+群で喫煙指数が有意に高かった.%VC,FEV1%は両群ともに基準範囲内で有意差を認めなかったが,%DLcoと%DLco/VAはTWLC+群で有意に低値であった.TWLCを認めた30例中25例でTWLCの拡大進行を認めた.
[結論]
 特発性の慢性線維化性間質性肺炎において,喫煙は機能的にも画像上も特徴的な変化をもたらす.最も顕著であったのは,肺機能上はDLco/VAの低下であり,X線画像上はTWLCとその進展であった.


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