
臨床試験 Clinical Trials
臨床試験とは新しく考案された診断法や治療法が病気に対して有効かどうか、また安全かどうかを実際に患者さんに協力していただいて調査することをいいます。医学が進歩するためには、臨床試験から情報や知識を得ることが不可欠であり、現在私達が使用している薬や治療法などはほとんどが臨床試験の積み重ねによるものです。
当科で行っている臨床試験はおもに抗がん剤を対象としたものです。その中には新薬の開発の一環として有効性や安全性を調査するために行うもの(いわゆる「開発治験」)とすでに市販されているお薬を対象として新たな組み合わせなどについて調査するものとがあります。多くの試験は国内の臨床試験グループ(次の項で説明しています)によって行われています。また、一部の試験は欧米の臨床試験グループと共同で行われています。いずれも当院の治験審査委員会あるいは倫理委員会で安全性や試験を行うことの妥当性などについて厳しく審査され、承認されたものです。また、試験が開始されてからも患者さんの安全性の確保のために常にモニタリングされています。
臨床試験においては、標準治療とされている治療法よりも優れていると期待される薬剤、あるいは薬剤の組み合わせで治療を受けられる可能性があります。また、新薬の「開発治験」では治療や検査にかかる費用の一部を薬品メーカーに負担してもらえる場合があります。このように臨床試験に参加することで社会的な貢献ができるだけでなく、患者さんご自身にもメリットがあります。
臨床試験を行うにはたくさんの患者さんのご協力が必要です。最近はより多くの患者さんに参加していただくために複数の施設が協力して臨床試験を計画・実行するようになってきました。この医療施設の集まりのことを臨床試験グループと呼びます。多くの患者さんに参加していただけること以外に、複数の施設の関係者によって臨床試験の内容を検討することでより安全でかつ社会的・医学的な貢献度の高い試験を実行できるメリットもあります。臨床試験グループには地方レベルのものから全国規模、さらには欧米の施設とのグループもあります。
当院が参加している臨床試験グループは次の通りです。
婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構(略称;JGOG)http://www.jgog.gr.jp/
国内で最大の全国規模の婦人科がんの臨床試験グループです。国内の主な婦人科がん診療施設のほとんどが参加しています。
婦人科がん臨床試験コンソーシアム(略称;GOTIC)http://www.gotic.jp/
北関東地区の婦人科がん診療を行う主な病院で構成される臨床試験グループからスタートし、現在は北海道から沖縄までの全国の施設が参加する臨床試験グループです。
NRG Oncology-JAPAN
米国を中心とした世界最大の婦人科がんの臨床試験グループGynecologic Oncology Group (略称; GOG)が、他の臨床試験グループと合併しNRG Oncology (https://www.nrgoncology.org)に再編成されたのに伴い、日本では婦人科腫瘍グループ・放射線治療グループ・腫瘍内科/外科グループの3つのグループで構成されるNRG Oncology-JAPANが組織されました。米国でNRG Oncologyが主導する臨床試験を日本で実施しています。当院は NRG Oncology試験を実施する上での日本における主たる施設です。
Gynecologic cancer intergroup (略称GCIG)https://gcigtrials.org/
ヨーロッパの婦人科がん臨床試験グループが国際共同試験ネットワークを構成したのが始まりですが、現在では世界中の各国・各地域の臨床試験グループが参加するネットワークとなっています。当院は上記のGOTICの一員としてGCIGに参加しています。
当院では世界最先端レベルの治療を患者さんに提供するため、臨床試験への参加を積極的にすすめています。現在、当院から参加可能な臨床試験は以下の表のとおりです。ここにある臨床試験以外の試験に参加の希望がある患者さんには参加可能な施設にご紹介しています。もちろん、臨床試験への参加を強制することはありませんので臨床試験への参加の有無は患者さんが自由に決めることができます。
Ib1、Ib2、IIa1期
国際共同試験
国内多施設共同試験
医師主導治験
StageI-II非類内膜癌もしくはp53変異パターン、Stage III/IV全組織型
国際共同試験
企業治験
IIIC─IV期
国内多施設共同試験
医師主導治験
国際共同試験
医師主導治験
国際共同試験
企業治験
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注1.赤字で示した薬剤は保険適応のない新薬です。
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注2.第3相試験は“ランダム化”という操作により無作為に治療法が選択されます。治療法は患者さん自身や担当医師が決めるのでなく、先入観が入らないように第3者機関でコンピュータを使用して中立的な方法により2つあるいは3つの治療法それぞれに患者さんが均等になるように割り振られます。
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注3.プラセボとは試験薬と見分けがつかないように作成された効能のない薬剤で通常、担当医や薬剤師にも試験薬と見分けがつきません。薬剤の効果を正確に比較するために必要なものでしばしば第III相比較試験で用いられます。
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注4.臨床試験への参加をご希望された場合でも以前に受けられた治療内容や病状、検査結果によっては参加できない場合もあります。
臨床試験の内容、その他についてご質問等があればご遠慮なくおたずねください。