Research
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研究

埼玉医科大学国際医療センター婦人科腫瘍科では、実際の診療で患者さんに対してお役に立てるような治療法や臨床マーカーの開発などを目指した研究を行っています。特にこれまでがんの3大治療法と呼ばれる手術療法、化学療法、放射線療法とは異なる新規治療法に関する基礎研究からトランスレーショナルリサーチが現在進行中、あるいは計画中です。より効率的に研究を行うために他大学やベンチャー企業との共同研究も積極的に進めています。

ゲノム薬理的解析を

卵巣癌には標準化学療法が確立されていますが、残念ながら初回治療に反応しない例も散見されます。また、反応不良例のサブグループが予測できれば治療を個別化できる可能性もあります(初回治療に別の治療レジメンを適用する可能性)。このような薬剤応答における遺伝的な個体差を予測し、最適な治療薬や投与量を選択するために遺伝子解析を用いる概念 (Pharmacogenomics) の研究が進められています。抗癌剤治療の分野では、薬剤代謝酵素などの遺伝子多型と治療効果および毒性の発現の関連性を調べること、また腫瘍の遺伝子発現が治療感受性マーカーとなる可能性についての研究が癌治療の進歩に大きな役割を果たすと考えられています。この研究では、卵巣癌/腹膜癌根治切除不能例に対するTC療法の新規投与法[Carboplatin (CBDCA) 腹腔内投与/weekly Paclitaxel (TXL)併用療法] の有用性と安全性を検証すると同時に個人応答の予測因子をゲノム薬理学的解析を用いることで検証を行います。(埼玉医科大学国際医療センター トランスレーショナルリサーチセンター との共同研究)

がん免疫治療法

免疫療法とは身体が自然に有している防御機構をさらに強化することによって疾患の治療を試みることをコンセプトにした治療法です。その中でもがんワクチン療法はがん抗原とよばれる成分をがん患者に投与することで癌に対する特異的な免疫を誘導し、免疫力によって癌を治療することを目標としています。
私たちは婦人科がんに対する有望ながん抗原の同定、効果的な免疫法について研究を進めています。
現在以下のがんワクチン療法に対する臨床試験が準備中です。

  • ① 子宮頚がんに対する新規がん抗原ペプチドを利用したがんワクチン
  • ② 卵巣がんに対する新生血管を標的としたがんワクチン
がんワクチン がんウイルス治療

ウイルスはさまざまな病気を引き起こすことがありますが,うまく利用するとガンを効果的に攻撃する新しい治療法になる可能性があります。ウイルスは宿主の細胞に感染、増殖することによってダメージを与えますが、ある種のウイルスはがん細胞だけに選択的に感染してがんを攻撃することが明らかになってきています。
現在私たちは以下のように、卵巣がん細胞には効率よく感染するが正常細胞には影響を与えないようなウイルスの開発を進めています。

  • ① 卵巣がんに対するセンダイウイルスを利用したウイルス療法の開発
  • ② 弱毒ワクチン株を利用した新規ウイルス療法の開発
がんウイルス治療の機序 卵巣がん細胞
マイクロRNAを利用した新規臨床マーカーの開発

マイクロRNAはおよそ22塩基からなる内因性のsmall RNAsの一種で、近年の研究によってある特定の遺伝子の発現抑制に深く関わる分子であることがわかってきています。私たちはこのマイクロRNAが卵巣がんの進行や抗がん剤の抵抗性に深くかかわっている可能性があることを明らかにしています。現在低侵襲に腫瘍のマイクロRNAを調べる方法の開発や、治療法の選別のマーカーとなりえるかを検討するための研究を開始しています。

IL-6シグナル伝統系を標的とした卵巣がんの治療戦略

IL-6は多能性サイトカインの一つで、免疫系、造血系、神経系の分化、増殖に深く関わっています。一方である種のがんにおいてはIL-6の過剰発現が認められておりその悪性度とも相関するといった報告がります。IL-6は卵巣がんにおいて以下の作用を持つ可能性があると考えられています。

  • ①腫瘍細胞に対する抗アポトーシス効果
  • ②VEGFを介した腫瘍血管新生の促進
  • ③腫瘍免疫の抑制
  • ④化学療法の耐性獲得

卵巣がんにおけるIL-6シグナル伝達系の生物学的な機能を明らかにし、卵巣がんの治療標的としての有用性を研究しています。またこのシグナル伝達系のうちどの分子が最も治療表標的として有用かを検討します。