臨床医学に応用可能な病態生化・生理学として、特に、ストレスに応じて引き起こされる精神身体不適応の中枢メカニズムを脳内シナプス伝達機能の面から解析すること、さらに核酸代謝、脂質代謝の面から代謝異常症を解明することを目指しています。
研究テーマ
I. 中枢神経研究:村越, 向井, 篠崎
1. 扁桃体オシレーション
2. 帯状回抑制性シナプス伝達機能
3. 味の素株式会社との共同研究:嗜好性形成脳内機構
II. .酵素化学研究:穂苅
4. dUTPase研究
5. アミラーゼ研究
III. .脂質代謝研究:瀬尾
7. PPARs
8.リポタンパク研究
IV. 小腸における脂質輸送ダイナミクス:中野
興味ある分野
研究歴
これまでに得られた知見
発表論文
学会発表
特許・グラント
夏期プロ
I-1.ストレス負荷による前部帯状回皮質のシナプス可塑性と行動変化
ヒトの精神疾患の多くは遺伝的背景とともに生活上のストレスの影響で発症や症状の増悪が起こります。この脳内メカニズムを知ることは、こころの実体である脳の原理を知る手掛かりになるとともに、病気の予防や治療にもつながる重要な課題です。我々の研究室では様々なストレスを動物(マウスやラット)に与え、行動の変化を調べるとともに、その脳を取り出してスライス標本を作製し、電極を刺して神経活動を観察します。これまでにストレスにより脳内の重要な抑制性シグナルを発するGABA(γアミノ酪酸)ニューロンが機能不全になることを見出しています。
I-2.扁桃体における神経回路オシンレーション発生のメカニズムとその生理学的意義
快不快、不安、嫌悪、様々な感情や情動の中枢と言われる扁桃体で、1秒に1回程度の遅いリズムの神経活動が多くのニューロンの間で一斉に(同期して)起こっていることを見出しました。このようなリズム(神経回路オシンレーション)は、そもそも我々が生きていることの証であるとともに、この場合の扁桃体オシレーションは激しい情動の際の記憶学習の固定や強化に寄与していると考えられます。また睡眠時の記憶固定にも寄与しているのかもしれません。しかしそのリズム発生機構はいまだに不明なままです。そこでラットの扁桃体スライス標本を利用して、2つのニューロンから同時にホールセルパッチ記録を行い、リズムの主導役の細胞を見つけようとしています。これは群馬大学柳川右千夫教授が作製した V-GAT- Venus ラットを利用し効果的にGABAニューロンを狙うことで実現しつつあります。
I-3. ラットに対するエチルアルコール慢性投与による辺縁系シナプス機能の変化につき、 帯状回および扁桃体におけるGABA抑制機能を中心に検討中。
II-4. ミトコンドリアdUTPase については肝臓のほか, あらたに腎臓から精製を進めている。
II-5. ウサギを使って抗血清を作成した.ウエスタンブロットで肝臓中のα-アミラーゼについて検索,また, 唾液腺の酵素をもとに抗血清を得た。小腸や胃の組織で検出されるα-アミラーゼの役割について検討を進める予定である.
III-6. ヒト初代培養肝細胞に高濃度不飽和脂肪酸を負荷した in vitro 脂肪肝モデルを用い、脂質代謝異常に対する改善効果を検証するモデルを用いた研究を引き続き行っている。本年度は、本病態モデルに対して様々な品種の大豆抽出物が脂肪肝形成抑制効果を有するか否かを検討した結果、丹波の黒豆抽出物が脂肪滴蓄積抑制効果を有することを見出した。また、丹波の黒豆抽出物は、脂肪酸代謝だけでなくコレステロール代謝にも転写因子レベルで調節作用を発揮する成果を得た。
III-7. 糖尿病・動脈硬化症などの生活習慣病発症に対する核内受容体 PPARs の発現および活性化を介した改善効果に関しては, 前年度に引き続き検証を行っている.本年度は, ヒト PPARδの発現および活性化の評価系を確立したことから, 高脂血症治療薬スタチンによる PPARδ発現・活性化の詳細な分子機構の検証に着手している.
III-8. 立教大学の田渕眞理准教授と共同研究を行ってきた, バクテリアルセルロースを担体として用いたリポタンパク質測定方法の確立および臨床応用にむけた研究に関しては, 採血後の微量な血清を試料として用い, 各リポタンパク質を定性的に分析する方法を確立した.特に HDL 亜画分に関しては, 粒子形状依存的に分離・定性していることを詳細に検証し, 論文発表を行った.
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