病気の説明と治療方法

解説

正常の尿の中にはタンパク質はほとんど含まれていません。腎臓の働きが異常になると、血液のタンパク質が尿の中に大量に漏れ出てしまうことがあります。このような病気をネフローゼ症候群と呼んでいます。タンパク質が大量に漏れ出てしまう状況では、血液の中のタンパク質が減少し、水分が血管の中に留めおけなくなって血管の外に漏れ出してしまい、むくみます。同時に体に塩分と水分が蓄積するため、体重が増えて、さらにむくみが増悪します。ゆっくり進行する場合と、急に悪くなる場合があります。腎臓以外には病気がなく、急に起こったネフローゼ症候群は、正確に診断できれば、薬で症状を抑えることが可能な場合があります。

正確な診断のために、入院をして腎生検をおこないます。腎生検は、背中から太めの針を腎臓に刺して、腎臓の一部を採取する検査です。採取した腎臓を顕微鏡で観察して、治療のやり方や今後の病気の見通しを考えます。

治療方法

治療にはステロイド剤を使用します。効果は高いですが副作用が多く、専門医に相談しながら投与量や投与期間を慎重に調整する必要があります。ステロイド剤の使用中は患者さんの自己管理がとても大切です。ステロイド剤で病気の勢いを抑えることができても、ステロイド剤を減量すると再発しやすいのがネフローゼ症候群の特徴です。適切なお薬を選びながら、一生に渡って治療が必要な場合も珍しくありません。

また、治療の効果が低く、尿にタンパク質が出続けたり、治療に使用するステロイド剤の副作用で全身に色々な不具合が起きてしまう場合も珍しくありません。年齢が高い方ほど、治療が難しくなることが知られています。

解説

嚢胞とは、液体が入った風船様の構造のことです。正常な腎臓が徐々に嚢胞に置き換わってしまい、正常に働いている部分が少なくなってしまう病気を嚢胞腎と呼んでいます。原因となる遺伝子の異常が知られており、親御さんから受け継いだ遺伝子が原因で病気になる場合もありますが、それ以外の場合（患者さん以外にはご家族に同じ病気の方が居ない場合）も珍しくはありません。お腹の超音波検査や、X線CT検査で偶然にみつかり、「腎臓に嚢胞がたくさんあります」と説明されて、初めて自分の病気に気がつく患者さんもいます。
嚢胞を無くす治療はありませんが、病気の進行を遅らせるお薬があります。

腎臓以外の内臓にも病気が見つかることが多く、肝臓にも嚢胞が多数みつかったり、脳動脈瘤（脳の動脈の膨らみ。くも膜下出血の原因になります）がみつかることがあります。 難治性腎障害に関する調査研究班（編）：エビデンスに基づく多発性嚢胞腎PKD診療ガイドライン2020. 東京医学社

治療方法

根治療法はありませんが、病気の進展を抑制する治療として、バゾプレッシンＶ２受容体拮抗薬であるトルバプタンがあります。腎嚢胞の増大速度が速い患者さんに対して腎嚢胞の増大と腎機能の低下を抑制することが報告されています。
また、降圧治療が脳動脈瘤破裂のリスクを低下させることや心血管合併症の予防には有効と考えられています。

解説

腎臓の一部に異常なタンパク質が蓄積して、腎臓に「炎症」がおきます。炎症をおこしている腎臓は、尿の中に血液の成分が漏れ出てしまうため、尿に血液が混じります。健診で「血尿・タンパク尿が陽性です」と言われた場合は、IgA腎症の可能性があります。自覚症状はありません。病気が悪くなるスピードはとてもゆっくりですが、何も治療しない場合、腎臓の働きが徐々に低下してしまいます。正確に診断できれば、薬で病気の進行を抑えることが可能ですが、完全に治すことは難しいです。

ネフローゼ症候群と同じで、正確な診断のために、入院をして腎生検をおこないます。腎生検は、背中から太めの針を腎臓に刺して、腎臓の一部を採取する検査です。採取した腎臓の組織を顕微鏡で観察して、治療のやり方や今後の病気の見通しを考えます。

治療方法

治療にはステロイド剤を使用します。効果は高いですが副作用が多く、専門医に相談しながら投与量や投与期間を慎重に調整する必要があります。ステロイド剤の使用中は患者さんの自己管理がとても大切です。その他、異常なタンパク質の発生源になっている扁桃（喉にある、免疫を担当している器官）を取り除いてしまう手術をおこなうことがあります。
IgA腎症は患者さん一人ひとりの病気の程度や見通しが大きく異なることが特徴です。専門医と相談しながら、それぞれの患者さんに適切なオーダーメードの治療を考える必要があります。

解説

「免疫」は、本来は外敵から身を守るための仕組みですが、免疫の攻撃相手が自分の体になってしまう病気があります。攻撃対象として腎臓が選ばれた場合、腎臓が激しく攻撃されて、数週間から数か月という短期間で破壊されてしまいます。このように免疫の仕組みの異常で腎機能の低下が急速に進行する病気を急速進行性糸球体腎炎と呼んでいます。病気の原因がいくつか知られていて、その一つがANCAと呼ばれる異常なタンパク質です。血液検査で調べることが可能です。腎臓以外にも肺やその他の小さな血管が攻撃されて、肺から出血したり、痺れや関節痛、発熱、怠さの原因となります。診断や治療が遅れると死亡に至ることもある大変重い病気です。

治療方法

正確に診断して薬で病気の勢いを上手に抑え込むことが出来れば、腎臓の破壊を途中で止めることが可能です。ANCAが血液の中から消えてしまうこともあります。これまでご紹介した病気と同様で、この病気も正確な診断のためには腎生検をおこない、治療にはステロイド剤を使用します。ステロイド剤だけでは治療が難しい場合も稀ではなく、複数の免疫抑制剤を一緒に使用する場合もあります。最初の治療が上手くできても、治療を弱めると再発する場合が珍しくありません。他の腎臓病と同様で、完全に治すのは難しい病気で、上手く付き合っていくことが重要です。

解説

AKIとは、数時間～数日で間に急激に腎機能が低下する状態をいいます。尿量の低下により（尿量が減少しない場合もあります）、重症の場合にはむくみ（浮腫）や全身倦怠感などが認められますが、早い段階では無症状のこともあります。

原因の多くは脱水や出血により腎臓への血流が低下すること（腎前性）ですが、そのほかに腎臓の炎症や尿細管細胞の障害などにより腎機能が低下すること（腎性）や、前立腺肥大や尿管結石、尿路悪性腫瘍などによる尿路系の閉塞（腎後性）があります。

治療方法

腎前性、腎性、腎後性を鑑別し、その原因治療を行います。また、浮腫や電解質異常などが認められた場合は透析を施行します。腎機能障害は一時的で、改善するのが一般的ですが、原因や合併症の状況によってはAKIから慢性腎臓病や末期腎不全に移行する場合も認められます。

主な症状

CKDでは、腎機能が高度に低下するまでは自覚症状に乏しく、検尿や血液検査などの検査を行うと蛋白尿や血清クレアチニンの上昇などを認めるだけです。その他、糖尿病や高血圧などのCKDの原因となる病気の症状や検査の異常を認めます。腎機能が高度に低下すると、治療薬抵抗性の高血圧や浮腫をきたします。
また尿濃縮力が低下して夜間頻尿をきたしたり、腎性貧血から疲れやすくなったりします。

血液検査では高カリウム血症や高尿酸血症、低カルシウム血症や高リン血症を認めます。腎機能がさらに低下して尿毒素などの老廃物が蓄積すると、強い倦怠感や息切れ、悪心や頭痛などを自覚するようになり、透析療法が必要となります。

解説

治療方法

糖尿病や高血圧、慢性糸球体腎炎などのCKDの原因となる病気に対する治療とCKD全般に行われる治療があります。後者には生活習慣の是正として禁煙や肥満の是正、減塩（食塩6グラム/日未満）やたんぱく質制限などの食事療法、腎機能を損なう薬剤（鎮痛薬や画像診断時の造影剤など）を避けることなどがあげられます。
蛋白尿が陽性の場合には降圧薬としてレニンアンジオテンシン系阻害薬が選択され、また近年はSGLT2阻害薬という新しいお薬が使用できるようになりました。腎性貧血にはエリスロポエチン製剤の注射やHIF-PH阻害薬の経口薬が用いられます。

その他、高カリウム血症や高尿酸血症、低カルシウム血症や高リン血症に対する治療薬を内服します。このような治療を行ってもCKDが進行してステージ５（図）に達すると、上記のような自覚症状が出てくるので、血液透析や腹膜透析、腎移植などの腎代替療法の導入を考慮します。