留学体験記

渡會恵介先生

平成29年度日本股関節学会海外研修制度に選出していただき, Boston Children’s Hospital(BCH)で平成30年6月から8月まで3カ月間の研修をさせていただきました。
このような機会を与えてくださったすべての日本股関節学会関係者の皆様, 埼玉医大関係者にこの場を借りて御礼申し上げます。

さて, Harvard Medical Schoolのteaching hospitalであるBCHは, 評価機関による調査で何度も全米No.1に輝いている小児病院です。
全米はもとより世界中から患者が集まり整形外科だけで年間6000件の手術が行われています。 その中で私が所属したChild and Young Adult Hip Preservation Programは, その名のとおりHip osteotomyが治療の柱であり,Young-Jo Kim先生を中心として, Millis先生,Matheney先生,Novais先生など多くのPhysicianが小児から40歳位までの症例の治療にあたっていました。
またHip arthroscopyも積極的に行われていました。
さらに関係者のご好意により分院のBCH at Waltham, 同じHarvard teaching hospitalであるBRIGHAM WOMEN’S HOSPITALと Beth Israel Deaconess Medical Centerにも行かせていただき, 計4病院で手術・外来を中心とした研修をさせていただきました。
手術だけでなく,その後の経過を外来で直に診れたことが,大きな財産となりました。

圧倒的な経験と知識を有するPhysicianの先生方, 毎日忙しく働くClinical fellow,世界中から集まるResearch fellow, モチベーションが非常に高いResidentの面々,非常に優秀で親切なPA/NPやRN, 多様な言語のInterpreter,これらすべての方々との貴重な時間が私の世界を広げてくれました。
また日本の股関節外科医の論文が,本当によく読まれ,そして認められていたこともわかり,大きな励みとなりました。

頂いた貴重な経験は今後に生かしていく所存であります。


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大村泰人先生

まだ入局して間もないころに本教室の先輩医師に「今自分がやっている治療や診療が本当に正しいのか、ここで教わったことが本当にbestな方法なのか常に自問自答しろ。井の中の蛙になるな。」と教わり、それ以降常にそのことを心がけてきました。
2013年10月に外病院のローテーションから戻り手外科班に入った後も、学会での講演や読んだ論文で興味を持てば、学会会場で演者の先生に病院に手術見学に行っていいかと詰め寄って見学する機会を得たり、縁があってカダバートレーニングに参加できる機会があれば積極的に参加してきました。
しかし、長期間の研修は、外来や手術、病棟とすべてに穴をあけることになりなかなか決心できませんでした。
そんな中、織田弘美教授、門野夕峰教授、恩師である河野慎次郎准教授をはじめ、本当に多くの先生方のご理解とご協力のおかげで1か月間もの長い期間新潟手の外科研究所病院での研修を行うことができました。
感謝の気持ちを込めて、今回そのご報告をさせていただきます。

新潟手の外科研究所病院は、手外科に従事しているものであれば知らぬものはいない日本でトップクラスの手術件数を行っている病院です。
日本の手の外科の礎を築いた新潟大学の田島達也先生が1986年より当初は新潟中央病院の一部を利用し、『新潟手の外科研究所』として手外科診療を開始、その後2012年より新潟県の北蒲原郡聖籠町に50床の手外科専門病院である『新潟手の外科研究所病院』を設立し現在に至ります。
2012年の設立以降年間2500件以上の手外科手術を行っており、5人もの手外科専門医が常勤で働いている非常に珍しい病院になります。
現在ではなかなか実施困難となっているラットを用いたマイクロサージャリー研修や他病院からの研修受け入れを積極的に行っているため、手外科専門医となられた医師の中にも、過去に新潟手の外科研究所病院で研修を行っていた医師が多くいます。
私はこの病院で1か月間ではありますが、マイクロサージャリー研修を含めた手術見学を行わせていただきました。

月曜日から金曜日まで毎日手術を行っており、扱っている疾患自体には埼玉医科大学病院と大きな違いはありませんでした。
ただし、5人ものベテランの手外科専門医がおり、それぞれが多くの経験に基づく持論があるため、個別の疾患に対する治療法や考え方に微妙な違いがあります。
その治療法をなぜ選択しているのか、なぜ他の方法では足りないと感じているのか、治療を変えてきたその変遷などの意見を各々の先生に聞くことは非常に勉強になりました。
同時に行わせていただいたマイクロサージャリー研修はご高名な吉津 孝衛先生にマンツーマンでご指導いただきました。
動脈縫合の基礎を、手取り足取りご指導いただき、さらにラットで遊離皮弁の練習まで行わせていただいたことは私にとっては生涯忘れることのない貴重な経験となりました。
吉津先生がマイクロサージャリー研修を行うのは私が最後となるとお聞きましたので本当に良い時期に研修をさせていただいたと思っています。

前述しました通り、他の病院への手術見学やカダバートレーニングなどの研修に行くことは、現在自分が当たり前に行っていることが本当に最善最良の方法なのかという確認にもなるだけではなく、論文や講演だけではわからない細かい手術手技の学びにもつながります。
いままでに多くのカダバートレーニングへの参加、他病院への手術見学に行かせていただきました。
行くことにより収穫がなかったことは一度もありません。
学んだ経験や知識を他の医局員と共有することができれば、それは医局全体の財産になります。
これからの医局を担っていく若い先生方には是非とも日常の診療のみを行うだけにとどまらず、外にも目を向け機会を逃すことなく研修を積極的に行っていただきたいと切に願っております。

最後になりますが、この度は大変貴重な経験をさせていただき誠にありがとうございました。
この場を借りて心よりお礼申し上げます。


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