埼玉医科大学リウマチ膠原病科

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研究内容

CD8陽性T細胞記憶の機序の解明

 CD8陽性T細胞は、ウイルスや腫瘍の排除に重要な役割を持つ細胞傷害性リンパ球です。抗原刺激を受けるとナイーブ細胞はメモリー細胞に分化し、来たる抗原刺激に備えます。しかしながら、どのようにメモリー細胞が形成され、維持されているのかは明らかではありません。私達は、ヒストン修飾がメモリー細胞の機能と分化に重要である事をこれまで報告してきました。CD8陽性T細胞の分化に関わるマスター転写因子であるEOMES、及び細胞傷害時に分泌するパーフォリンやグランザイムBの発現がヒストンアセチル化により制御されている事を明らかにしました。
さらに、CD8陽性T細胞の遺伝子において、クロマチン構造が開いていて転写が亢進しているacitve gene、クロマチン構造が閉じており転写が抑制されているrepressed gene以外に、クロマチン構造が開いているにも関わらず転写が亢進していないpoised geneが存在する事を見出しました。このpoised geneではクロマチン構造が開いているため、細胞に刺激を与えると転写が亢進します。また、開いたクロマチン構造で見られるヒストン修飾(H3K4me3)と閉じたクロマチン構造で見られるヒストン修飾(H3K27me3)の両者が存在するどっちつかずの遺伝子であるbivalent geneも見出しました。このbivalent geneは細胞に刺激を与える事によりクロマチン構造が開くか閉じるかのどちらかに変化すると考えられます。
今後さらに、ヒストン修飾がメモリー細胞においてどのように制御されているかを明らかにしていきたいと考えています。そのため、ヒストン修飾に関与する酵素に的をしぼり解析を進めています。
(文責:荒木 靖人

文献
1) Weng NP, Araki Y, Subedi K. Nat Rev Immunol. 12(4):306-15, 2012.
2) Araki Y, Wang Z, Zang C, Wood WH, III, Schones D, Cui K, Roh TY, Lhotsky B, Wersto RP, Peng W, Becker KG, Zhao K, Weng NP. Immunity. 30(6):912-925, 2009.
3) Araki Y, Fann M, Wersto R, Weng NP. J Immunol. 180(12):8102-8108, 2008.

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